最後に完了した暦年である2025年の東証IPOは、一般市場59社、TOKYO PRO Market46社でした。翌年に当たる2026年は9月までで一般市場31社、TPM36社です。年全体と途中経過を分けて見ると、一般市場では市場構成が変わり、TPMの年初来件数は前年同期を上回っています。[1][2]
本記事は投資受入れ後1〜3年程度のIPO準備初期の企業に向けた年次レビューです。2025年の確定した年間実績を振り返り、翌年2026年の論点を2026年10月5日に確認できる資料で整理します。2026年通年や2027年の結果を予測したものではありません。対象は東証のみで、予定・テクニカル上場・市場変更・TPMから一般市場への上場をIPO本体と区別します。
2025年の一般市場は59社でグロースが40社
JPXの2025年「IPO(東証)」によると、プライム7社、スタンダード12社、グロース40社で、一般市場の合計は59社でした。TPM46社を別枠で加えると105社です。この105社を一般投資家向けIPOの件数として使わず、市場の違いを示したうえで合計を読む必要があります。[1]
一般市場59社のうちグロースは40社で約67.8%です。ただし、この比率は件数の構成比であり、資金調達額や上場企業全体の時価総額の構成比ではありません。大きな案件が一件ある場合と小さな案件が複数ある場合で、資金面の影響は変わります。市場環境を自社の資本政策へつなげるときは、件数に加えて個別の公募・売出しや資金使途を確認します。
| 市場 | 2025年通年 | 2025年1〜9月 | 2026年1〜9月 |
|---|---|---|---|
| プライム | 7社 | 4社 | 0社 |
| スタンダード | 12社 | 7社 | 13社 |
| グロース | 40社 | 22社 | 18社 |
| 一般市場合計 | 59社 | 33社 | 31社 |
| TOKYO PRO Market | 46社 | 30社 | 36社 |
一覧をそのまま数えると移行や再上場を見落とす
2025年の新規上場会社一覧には、テクニカル上場の銘柄と、TPMからグロースへ上場したAlbaLinkも載っています。JPXの月次表はTPMからの上場1社を別表に掲載しており、グロースのIPO40社には含めていません。今回の一般市場59社はこの定義に合わせ、会社名の「*」が付くテクニカル上場も除外しました。[1][3][4]
一方、SBI新生銀行は12月17日の上場銘柄として一覧に掲載され、JPXの2025年一般市場IPO集計に含まれています。年次資料で「新規上場」と書く場合、未上場スタートアップだけの数を意味するのか、再上場などを含むJPXの集計なのかを明確にする必要があります。本記事はJPXの集計に合わせた59社を用いています。[1][3][7]
外国株として表示された銘柄や他取引所からの上場を混在させた全国集計ではありません。同じ「IPO件数」という見出しでも資料によって母集団が異なるため、前年比較の前に範囲をそろえることが基本です。
2026年の途中経過は前年の同じ期間と比較する
2026年1〜9月の一般市場31社は、前年同期33社より2社少なくなっています。一方、TPMは前年同期30社から36社へ6社増えています。一般市場とTPMを合計すると前年同期63社、今年67社ですが、一般市場の減少とTPMの増加を分けて説明した方が、経営判断に必要な情報が伝わります。[1][2]
市場別ではスタンダードが7社から13社へ増え、グロースが22社から18社へ、プライムが4社から0社へ変化しました。これを市場全体の優劣や審査の容易さと結びつけることはできません。準備中の企業の事業規模や選択、上場日の分布なども関わるため、件数表だけでは理由を特定できないからです。
なお、2026年7〜9月だけを見ると一般市場は14社で前年同期8社より増えています。直近四半期の増加と年初来の減少は両立します。経営会議に市場動向を報告する際は、通年、年初来、直近四半期を混ぜず、比較対象を一行に明記してください。[1][2]
翌年の論点は上場後の成長まで説明できるか
2025年から2026年にかけて確認すべき制度上の論点は、グロース市場での成長計画と上場後の維持基準です。JPXはグロースの時価総額に関する上場維持基準を、2030年3月1日から「上場5年経過後100億円以上」へ見直すと案内しています。現行の「上場10年経過後40億円以上」と、将来適用される基準を分けて理解する必要があります。[5]
これは一般市場すべてに共通する新規上場の数値条件ではありません。100億円を現在のIPO申請時点で一律に必要な条件と読み替えたり、スタンダードやTPMへそのまま当てはめたりしないでください。自社が目指す市場、上場時期、上場後の計画に即して制度の適用を確認します。
また、グロースでは「事業計画及び成長可能性に関する事項」の継続開示が求められます。2025年12月8日改訂の留意事項では、企業の収益構造、成長戦略、KPIなどを説明し、重要な変更時には速やかに更新する考え方が示されています。初期企業でも、数字の定義と集計元を整え、計画を出した後に進捗を説明できる状態を意識することが有用です。[6]
年次レビューを次の12か月の整備計画にする
管理体制の整備では、市場の件数を上場日の約束に変換せず、次の12か月に自社が改善できる課題へ置き換えます。月次決算をいつまでに締めるか、予算と実績の差を誰が説明するか、重要な契約変更をどこで把握するか、追加資金が必要になる時期をどう更新するかを決めてください。
売上計画は顧客数・単価・利用量などの前提に分解し、費用と資金繰りまでつなげます。成長が計画を下回る場合も、固定費と支払期限から資金の余裕を把握できるようにします。市場変更を検討する場合は、その市場で得たい効果と社内の運用負担を改めて比較します。
年の振り返りで価値があるのは、件数の増減を記録することに加えて、経営者と管理部門の判断材料をそろえることです。希望市場に合わせた課題の一覧、担当者、期限、確認資料まで決めると、市場情報が実際の準備に結びつきます。

翌年の管理体制整備を計画する
年次レビューをもとに、翌年の月次決算・予実管理・資金管理・内部統制の整備計画を具体化したい方は、荒澤公認会計士事務所へご相談ください。
参考資料
[1] JPX 最近のIPOの状況 2025年 IPO(東証)年間及び1〜9月、TPMからの上場
[2] JPX 最近のIPOの状況 2026年 IPO(東証)1〜9月及び7〜9月
[3] JPX 新規上場会社情報 2025年 2025年各銘柄、会社名末尾*、SBI新生銀行
[4] JPX 上場廃止の決定 AlbaLink TPMの2025年12月14日上場廃止及び12月15日グロース上場
[5] JPX 上場維持基準 グロース市場 時価総額欄、2030年3月1日見直し注記
[6] JPX 事業計画及び成長可能性に関する事項の開示 上場規程408条の2、2025年12月8日改訂留意事項1頁
[7] SBIホールディングス SBI新生銀行の東京証券取引所への新規上場承認に関するお知らせ 2025年11月13日公表 非公開化と再上場の経緯
本記事は2026年10月5日時点で確認した公表資料に基づく一般的な説明です。具体的な対応は、上場市場、会社の状況、関係専門家との協議等により異なります。 掲載企業の株式等への投資を推奨するものではありません。

