今年のIPO企業に多い業種・事業モデル

2026年1〜9月の東証一般市場IPO31社では、JPXの業種別分類で情報・通信業が12社、サービス業が8社でした。合わせて20社、全体の64.5%です。ただし、情報・通信業のすべてがSaaSというわけではなく、サービス業にもデジタルのプラットフォーム事業が含まれます。業種と収益の仕組みを分けて理解することが重要です。[1][33]

本記事は投資受入れ後1〜3年程度の経営者・CFO・管理部門向けに、今年の完了四半期までの実際の上場を整理します。プライム・スタンダード・グロースが対象で、TPM、テクニカル上場、市場変更、10月以降の上場予定を除外しています。東証のみの集計であり、全国のIPO統計や2026年通年の結果ではありません。

上位は情報・通信業とサービス業

対象31社の市場内訳はスタンダード13社、グロース18社、プライム0社です。各社のJPX「新規上場会社概要」にある業種別分類を1社1業種で数えると、情報・通信業12社、サービス業8社、化学2社、医薬品2社となります。残る7業種は各1社です。業種集計の原資料は出典[2]〜[32]に示しています。[33]

この集計は公募による資金調達額や投資家の人気を順位づけたものではありません。企業が上場した時期とJPXの分類を数えた結果です。同じ業種の上場件数が多いことから、その業種なら審査を通りやすい、あるいは高い評価額になると推定することはできません。

JPX業種別分類社数
情報・通信業12
サービス業8
化学2
医薬品2
建設業・食料品・小売業各1
金属製品・電気・ガス業各1
その他製品・不動産業各1
合計31

情報・通信業12社にも異なる収益構造がある

情報・通信業の中には、チャットプラスの問い合わせ対応システム、LiNKXの金融分野を中心とする基幹システム刷新、akippaの駐車場マーケットプレイス、TOブックスのコンテンツ企画・編集とアニメ等への展開が含まれます。ソフトウェアの継続提供、受託業務、取引の仲介、知的財産の活用を、一つの業種名だけで同じものとして扱わないようにします。[6][15][17][32]

比較企業を探す際は、月額課金か、案件単位の請負か、取引成立時の手数料か、商品や権利の販売かを確認してください。例えば継続課金を主な収益源とする自社なら、顧客数と単価に加えて解約や利用拡大を捉える指標が必要です。受託開発なら案件別の工数・原価・進捗が重要になります。これらは企業事例から導く管理上の提案であり、今回の12社すべてに同一のKPIが適用されるという意味ではありません。

プラットフォームという説明は複数業種にまたがる

別の観察として、31社の会社概要の「事業の内容」に「プラットフォーム」又は「マーケットプレイス」が記載されている企業を抽出すると7社でした。対象はakippa、Skyfall、オーディオストック、エブリー、アイ・グリッド・ソリューションズ、バトンズ、セイワホールディングスです。これは筆者による語句抽出で、JPXの正式な業種分類や収益モデルの認定ではありません。[6][7][9][11][12][22][27]

7社には情報・通信業だけでなく、サービス業、電気・ガス業、金属製品も含まれます。駐車場の利用者と提供者をつなぐ事業、音源の権利利用、エネルギー資源の統合活用、製造業の事業承継によるグループ経営は、同じ言葉を用いていても事業の流れが異なります。したがって「プラットフォーム型が7社」と書く場合も、共通の手数料モデルが7社あると読み替えることはできません。

この観察軸は業種別集計と重なります。情報・通信業12社と語句抽出の7社を足して19社にすることはできません。ビジネスモデルの比較では、顧客、売り手、会社の役割、請求の相手、代金の流れを一枚に描き、どこで収益を得るかまで確認します。

商品販売と研究開発でも管理の重点は変わる

化学に分類されるビタブリッドジャパンの会社概要は、ウエルネスケア商品の企画・開発とD2C販売を記載しています。一方、同じ化学のクラサスケミカルは基礎石油化学製品等の製造・販売です。同じ業種でも、顧客への直接販売と製造設備を伴う事業では、原価、在庫、広告費、設備投資を点検する切り口が異なります。[2][26]

医薬品の2社はジェイファーマとイノバセルです。会社概要にはそれぞれ医薬品開発、再生医療等製品の開発・製造・販売が示されています。これらの事例を見る場合は、売上倍率などの単一指標だけで比較するより、開発段階、今後の資金需要、契約や許認可の前提を読む必要があります。自社が研究開発型なら、支出の承認と記録、計画更新、資金繰りをつなげて説明する準備が重要です。[29][31]

IPO準備初期の比較表に入れる項目

業種が近い企業と収益の仕組みが近い企業をそれぞれ選び、比較表を作ります。まず売上の増加が、新規顧客の獲得、既存顧客の利用増、単価上昇、買収のどれに由来するかを確認します。次にその成長に必要な採用、広告、設備、研究開発の支出と資金の回収時期を整理してください。数値が取れない項目は空欄を埋めるために推測せず、自社が今後測るべき情報として残します。

管理部門では、経営者が説明するKPIと会計の売上・利益を照合できるようにします。例えば取引総額と会社の売上、契約件数と稼働顧客数、出荷と収益計上の時点は別の概念です。定義と集計元を固定し、数字が変わった際の理由を追える状態にすると、事業の説明と予実管理がつながります。

  • 顧客と請求先は誰か
  • 売上は何の条件で発生するか
  • 主な費用と資金回収までの時間
  • 成長を測るKPIの定義と集計元
  • 計画未達時に確認する原因
業種から自社の管理課題へ進む。業種を確認:JPXの分類で比較範囲を決定、収益構造を読む:請求・費用・代金の流れ、成長要因を分ける:顧客・単価・利用・買収、記録を整える:KPIと会計数値を照合
ビジネスモデルの観察軸は重複し、業種の社数とは合算しません。

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参考資料

[1] JPX 新規上場会社情報 2026年 2026年1〜9月の対象31社、会社概要への各リンク

[2] 東京証券取引所 新規上場会社概要 クラサスケミカル(株) 1頁 業種別分類・コード、事業の内容、既上場市場

[3] 東京証券取引所 新規上場会社概要 (株)レイヤード 1頁 業種別分類・コード、事業の内容、既上場市場

[4] 東京証券取引所 新規上場会社概要 (株)テクノクラフト 1頁 業種別分類・コード、事業の内容、既上場市場

[5] 東京証券取引所 新規上場会社概要 (株)ベルテックス 1頁 業種別分類・コード、事業の内容、既上場市場

[6] 東京証券取引所 新規上場会社概要 akippa(株) 1頁 業種別分類・コード、事業の内容、既上場市場

[7] 東京証券取引所 新規上場会社概要 (株)Skyfall 1頁 業種別分類・コード、事業の内容、既上場市場

[8] 東京証券取引所 新規上場会社概要 (株)オリバー 1頁 業種別分類・コード、事業の内容、既上場市場

[9] 東京証券取引所 新規上場会社概要 (株)オーディオストック 1頁 業種別分類・コード、事業の内容、既上場市場

[10] 東京証券取引所 新規上場会社概要 (株)KOMPEITO 1頁 業種別分類・コード、事業の内容、既上場市場

[11] 東京証券取引所 新規上場会社概要 (株)エブリー 1頁 業種別分類・コード、事業の内容、既上場市場

[12] 東京証券取引所 新規上場会社概要 (株)アイ・グリッド・ソリューションズ 1頁 業種別分類・コード、事業の内容、既上場市場

[13] 東京証券取引所 新規上場会社概要 (株)ビーエイブル 1頁 業種別分類・コード、事業の内容、既上場市場

[14] 東京証券取引所 新規上場会社概要 (株)ティアフォー 1頁 業種別分類・コード、事業の内容、既上場市場

[15] 東京証券取引所 新規上場会社概要 チャットプラス(株) 1頁 業種別分類・コード、事業の内容、既上場市場

[16] 東京証券取引所 新規上場会社概要 ネイス(株) 1頁 業種別分類・コード、事業の内容、既上場市場

[17] 東京証券取引所 新規上場会社概要 LiNKX(株) 1頁 業種別分類・コード、事業の内容、既上場市場

[18] 東京証券取引所 新規上場会社概要 GO(株) 1頁 業種別分類・コード、事業の内容、既上場市場

[19] 東京証券取引所 新規上場会社概要 梅乃宿酒造(株) 1頁 業種別分類・コード、事業の内容、既上場市場

[20] 東京証券取引所 新規上場会社概要 犬猫生活(株) 1頁 業種別分類・コード、事業の内容、既上場市場

[21] 東京証券取引所 新規上場会社概要 (株)SQUEEZE 1頁 業種別分類・コード、事業の内容、既上場市場

[22] 東京証券取引所 新規上場会社概要 (株)バトンズ 1頁 業種別分類・コード、事業の内容、既上場市場

[23] 東京証券取引所 新規上場会社概要 (株)ソフトテックス 1頁 業種別分類・コード、事業の内容、既上場市場

[24] 東京証券取引所 新規上場会社概要 ヒトトヒトホールディングス(株) 1頁 業種別分類・コード、事業の内容、既上場市場

[25] 東京証券取引所 新規上場会社概要 (株)システムエグゼ 1頁 業種別分類・コード、事業の内容、既上場市場

[26] 東京証券取引所 新規上場会社概要 (株)ビタブリッドジャパン 1頁 業種別分類・コード、事業の内容、既上場市場

[27] 東京証券取引所 新規上場会社概要 (株)セイワホールディングス 1頁 業種別分類・コード、事業の内容、既上場市場

[28] 東京証券取引所 新規上場会社概要 (株)ベーシック 1頁 業種別分類・コード、事業の内容、既上場市場

[29] 東京証券取引所 新規上場会社概要 ジェイファーマ(株) 1頁 業種別分類・コード、事業の内容、既上場市場

[30] 東京証券取引所 新規上場会社概要 (株)ギークリー 1頁 業種別分類・コード、事業の内容、既上場市場

[31] 東京証券取引所 新規上場会社概要 イノバセル(株) 1頁 業種別分類・コード、事業の内容、既上場市場

[32] 東京証券取引所 新規上場会社概要 (株)TOブックス 1頁 業種別分類・コード、事業の内容、既上場市場

[33] JPX 最近のIPOの状況 2026年 IPO(東証)1〜9月

本記事は2026年10月5日時点で確認した公表資料に基づく一般的な説明です。具体的な対応は、上場市場、会社の状況、関係専門家との協議等により異なります。 掲載企業の株式等への投資を推奨するものではありません。

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荒澤尚輝

荒澤尚輝

税理士・公認会計士

登録番号:159000 /41429

四大監査法人にて、主に金融機関に対する法定監査業務に従事。

その後、税理士事務所および公認会計士事務所を設立。創業・会社設立支援、税務顧問、記帳代行を中心に、中小企業や個人事業主の経営をサポートしている。

また、内部統制(J-SOX)構築支援、業務改善支援、IPO(株式上場)に向けた内部管理体制の整備支援など、公認会計士としての専門性を活かしたコンサルティング業務にも対応。監査・会計・税務の知見を活かし、経営者に寄り添った実践的な支援を提供している。

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